解剖の旅③

解剖研修もすでに3日が過ぎました。
皮膚からいくつもの膜と筋肉の層を越え少しずつ内側へ。4日目の今日は臓器を取り出します。
声のシステムがもうすぐ顕になります。もしかしたら私の考え続けてきた幾つかの仮定の真相もはっきりするかもしれません。
勉強してきた解剖学の本にないこと、アプリには乗っていない箇所も見つかり、個体差も大きく、では私たちはどうなのか、と見えるものと見えないものの間を思考が行き来し続けています。

ラボでは8時間の作業、ホテルに帰ると音楽家チームは2時間の復習会、時にはさらに議論を重ね、翌朝8時半からは筋膜研究の本アナトミートレインの著者であるトーマス・マイヤースさんのレクチャーが始まります。
ひとつも残すまいと目も耳も全開ですが、情報量も自分の中で起こることも多くて1日があっという間。夜には皆ヘトヘトになりながら議論をしています。隙間には外に出て発声を。やはり声を出すと元気になります。自分に身体が戻ってきたように。

朝のトムさんのレクチャーは私の大好きな時間のひとつ。
身体をあらゆる面から見つめていらしたトムさんは、まるで自在に変わる映画のカメラワークのように、私たちを顕微鏡の中から身体を形造る幾重もの層、全体、社会の中の身体、古代から現代、未来まで縦横無尽に飛び回りながら身体の作りと思考を見せてくださいます。

「解剖学はダヴィンチのいた時代にメスで切り分けることから始まったので、部位を分ける過程でそれらを覆う膜はいらないものとして追いやられてしまった。その結果長く研究が遅れてしまった。ひとつの卵の細胞から出発した私たちは、部品でできているわけではない。バラバラにならずにすむのはひとつの膜がそれらを覆っているから。私たちはひとつの大きな筋肉なんだ。」
トムさんは強く何度も話されます。

いくつものジャンルに縦割りされ、メソッド化される身体へのアプローチ方法は全体性で見れば実はとてもナンセンスなこと。さらに商業主義によってそれらは競争しあい、ことはさらにややこしくなります。
産業革命以降、加速度的にアンバランスになる私たちの身体。
トレーナーたちはあえてある部位を、もしくはある仕組みを取り出してアプローチしながら、ずっと自分たちが不要になる日を待っています。

ラボで8柱のご献体を前に、実に沢山のジャンルの医療者やトレーナーがそれぞれ異なるテーマで学びを続けています。
ふと顔を上げて白衣の群れを見た時、これはまるで社会のようだなと思いました。全く違うやり方で取り組みながら、でもそれはみんなひとつの身体のことを手分けしているのだから。
解剖学者のトッドさんが毎日おっしゃいます。
「これは全員でひとつの大きなプロジェクトなんですよ」

This is One Big Project !

写真はお昼休みにラボの前でトッド先生とみんな。

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