調子が良くないときにすること

秋が急にやってきました。
ひやりとする空気を急にまとって、周りの声屋さん達にも身体の変化や不調を感じる方がいらっしゃる模様。
“風邪をひかないことは仕事のうち”と皆さん予防に余念がありませんが、少し硬まりやすくなった全身の筋肉に、少し身構える気持ちに、例えば腰痛の声なんかもちらほら。
そろそろ身体を起こす時間が長めに必要になってきそうな気配です。

身体が楽器である声は日々調子が変わります。
本番にピークがくるようにもっていくのも大事ですが、調子が悪い時でも一定のラインは決して崩さない、ということも仕事をするのに大切なことだったりします。

「絶好調でスタジオに入れる日が一年のうちにどれだけあると思ってんのさ!」と日に何本も本番を抱えるような方から言われると、思わず「ははーッ」と頭を下げたくなります。
大変な仕事だなぁ。スポーツですね。

調子が悪い時に、技術がものを言う

 

私が声のトレーニングを気に入ったポイントのひとつに、自分の身体への信頼度が高くなるということがあります。

どんなに不調で、もうひと声だって出したくないような気分でも、ちゃんと身体は反応してくれるから、とどこか大きく信じていられること。
「ま、あとは身体が何とかするでしょ」といい意味で身体に任せてしまうことができるのは心強いものです。

トレーニングといったってそんな大層なことをしているわけではありません。
もともと動くようにデザインされている箇所が、ちゃんと動く状態になっていること。
神経の命令系統がパニックを起こさずにシンプルに整理されていること。
心と身体がチグハグになっていないこと。
それは声でも身体のトレーニングでも同じことですね。

呼吸器に置かれた沢山の調音役がそれぞれ自分の仕事を心得ていること。
空気を送るふいごが安定して働いていること。
姿勢制御のチームが全ての器官を空間に気持ちよく存在させていること。

そんな風にひとつひとつ納得していくと、漠然とした“良い声”を追う気持ちはひとまず置いておいて、あとはよろしく!っと肩を叩く気持ちでいられます。
多少連動が上手くいかない日でもね。

もしそこに少し知識があれば、今調子の悪い声に、一番負担の少ない方法を自分で選ぶこともできるかもしれません。
ま、これはコッソリやることかも知れませんが。

“今日はどんとこいだ!どんな超絶技巧だってできる気がする!”
そんな絶好調な日には、私たちは身体のことなんて忘れています。
思いのままに声をあげるだけで、身体はちゃんと適切についてきてくれますから。

一方調子が悪い時にものを言うのが技術なんじゃないかな。
日々コツコツ身体の動きを確認しながら、ふとそんな風に思ったりします。

いい秋になりますように。